教えて！住まいの先生

発刊に寄せて

小野寺日了先生との出合い

静岡県文化財調査員

山口 稔

小野寺先生が日逹貌下（日蓮正宗総本山、大石寺等六十六世法主)に初めてお会になら

れた時、日逹貌下派「お師さんが生きていたらさぞかしお喜びであったのに」と非常に残念が

られたとのお話しでしたが、日了上人と私の出合いもまた不思議な巡り合わせというほかに

いいようがありません。

私のライフワークである日蓮宗富士門流の「宗門史」研究も既に三十年になります。

その始めは富士の根方愛方鷹山麓にある沼津市井家裏の「お穴」からはじまりました。

やがてそれが、「熱の三烈士」の法難発生の寺、滝泉寺の研究となり、東京地袋の常在

寺住職で当時、日蓮正宗宗務総監の任に在った細井日逹師を訪ね、そして、その研究がー応

の完成を見たので報告に総本山大石寺に登って居られた細井総監を訪ねました。

大石寺では恰度大化城の地鎮祭の最中であった。受付の女性に面会をし込んだところ

「総監さんはやたらの人にはお会いしませんよ。」と断られた。用件の目的を話し、再度取

次ぎを頼むと態度が変わった。返事は「地鎮祭はあとー時間程かかりますが談話室でお待ち

下さい。」との事であった。そうして暫く待って居と細井総監は「ヤアー」と気さくに声

をかけて入って来られた。研究結果の報告を始めると、「ー寸待ってくれ。教学部長を同席

させるから、悪いが今一度始めから話して下さい。」といわれた。この私の研究報告の結果、

熱原の滝泉寺を大石寺の末寺として再建すると話が発展し、それから一年、金子吉

原市長を相手に悪戦苦闘してようやく寺院の建立許可を取った。

昭和三十五年五月三日、創価学会第二十二回本部総会が東京両国の日本大学講堂で開かれた。

それは創価学会第三代会長、地田大作氏の推戴式であり、その席上、大石寺の貌座に既に

進んでおられた日達貌下は、「順逆共に救わん。」と題して滝泉寺建立のいきさつを発表された。

（この講演は『日達上人御説法集』に収録されている。)それから暫くの間、諸般の事情も在って

日達貌下へのお目通り遠慮していたが昭和五十二年の末頃、富士宮的場の加茂家から小冊子

を送っていただいた。

その冊子の表題には『総本山大石寺諸堂建立と丑寅勤行について』と書かれていて日達貌下の

御講義を大石寺の蓮華編集部が発行したものであった。