教えて!住まいの先生
Q 土地所有権の範囲について 素朴な疑問なのですが、自分が所有している土地の権利というのは、上下、どこまでの範囲に及ぶのでしょうか?
例えば大都会に平屋が一軒あったとして、両隣に高層ビルが建ち、平屋の上空20mを通過する形で空中に渡り廊下を建設することは可能なのでしょうか。
(※日照権や建築法などを度外視する場合)
もし遥か上空まで所有権が及ぶのなら、平屋の上を通る飛行機は事実上、不法侵入をしているという解釈になる…?
例えば平屋の地下20mに地下鉄の路線が通っていたとして、地下鉄の運営会社は所有者に何らかの利用料を支払う必要があるのでしょうか。
もし遥か地下まで所有権が及ばないなら、権利者の意向に拘わらず、どんな危険な施設も無許可で作ることができる…?
自分には直接関係ないのですが、似たような案件でご近所トラブルが発生しているらしく、何となーく気になりました。法的に範囲は決まっているものなんですかね?
(※日照権や建築法などを度外視する場合)
もし遥か上空まで所有権が及ぶのなら、平屋の上を通る飛行機は事実上、不法侵入をしているという解釈になる…?
例えば平屋の地下20mに地下鉄の路線が通っていたとして、地下鉄の運営会社は所有者に何らかの利用料を支払う必要があるのでしょうか。
もし遥か地下まで所有権が及ばないなら、権利者の意向に拘わらず、どんな危険な施設も無許可で作ることができる…?
自分には直接関係ないのですが、似たような案件でご近所トラブルが発生しているらしく、何となーく気になりました。法的に範囲は決まっているものなんですかね?
ベストアンサーに選ばれた回答
A
回答日時:
2022/8/3 13:32:23
ええっとですね、、、質問から具体的に話をしますね。
他の回答者の回答にあるように、原則、土地の所有権は地上と地下に及びます。
しかし、どこまでが?って話になるのですが、
「例えば大都会に平屋が一軒あったとして、両隣に高層ビルが建ち、平屋の上空20mを通過する形で空中に渡り廊下を建設することは可能なのでしょうか。」
具体的に話をすると、上記のような渡り通路を作ろうとするとき、地上権の設定が必要です。厳密に区分すると、この場合では地上権のうち上空地上権といったりする。
地上権というのは、工作物または竹木を所有するためなどの目的で他人の土地を使用する権利。
民法
第265条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
地上権の取得には、法定地上権によるものと、地上権設定行為によるものがある。で、地上権設定行為は契約、又は遺言によるもの。で、この場合では、一般的には法務局で地上権設定登記をする。(まあ、後々色々と面倒なことになるから)
で、質問のような場合では、地上権設定契約を結び、地上権設定登記をするんだよな。
じゃあ、なんでこのような地上権という考え方や登記がされるのか?というと、そもそも土地の所有権や占有者等には、妨害排除請求権があり、自己の物権の実現が妨げられているとき、その妨害を取り除くよう請求することができるんだな。
質問のケースで考えてみると、例えばその平屋の所有者(ここでは土地と建物の所有者が同じとする)が家を取り壊し、マンションを建てようとしても、渡り廊下を勝手に作られてしまっては、マンションの高さにも制限ができてしまうだろう。そのため、隣り合うビルは勝手に渡り廊下を作ることはできないし、仮に勝手に作ったとしても、平屋の所有者の妨害排除請求により工事を差し止めさせたり、取り壊させることができるんだ。
一方で、隣り合うビルの所有者等は利便性を考えて渡り廊下を作りたいわけであり、平屋の所有者の妨害排除請求権の行使は絶対に避けたいだろう。
そのため隣り合うビルの所有者等は、平家の所有者に対して、地上権設定契約を結ぶしかないんだな。
で、ちょっと考えてもらいたいんだけど、このように地上権が設定されると、その土地の利用について、いろいろと制約が出てきてしまうだろう。当然のことながら、地上権が設定されると資産価値は下がる。
だから、大抵は地上権の設定に伴い、有償つまり地上権設定料を支払うことが一般的なんだ。(定期的な賃料の支払いがされる場合もあれば、一括で補償という形で支払われる場合もある)
ちょっと待て!じゃあ、借地契約やそれに類する契約でもいいんじゃないか?ってなるかもしれないけど、ここからが借地権と大きな違いが出てくるんだ。
借地権は期間の定めをしなかった場合、借地権の残存期間は当初は30年で、更新後第1回目は20年、それ以降は10年となるんだ。そのため、上記のような場合だと、平屋の所有者が30年の更新時に更新をしないと意思表示をされたら、借地権は消滅してしまうんだ。で、ビルを建てて30年で取り壊しではいささか早いだろう。
一方で地上権の場合、残存期間がないとすることができるんだ。
さらにビルのオーナーが他の人にビルを売却したとき、地上権は権利も譲渡されるのに対して、借地権は権利が譲渡されないんだ。
そのため、上記のような場合では地上権の設定が必要になってくるんだな。
「例えば平屋の地下20mに地下鉄の路線が通っていたとして、地下鉄の運営会社は所有者に何らかの利用料を支払う必要があるのでしょうか。」
じゃあ、地下ではどうなのか?というと、地下でも同様なんだ。この場合では地下地上権と呼ぶんだ。
地下の利用の場合でも、地下が勝手に使われると土地の利用に制約がかかるよな。例えば、平屋の所有者が地下部屋を作ろうとするときの障害にもなるし、ビルを建てようにも、基礎杭が打ち込めないから、高さも制約を受けることになるから土地の資産価値が下がってしまう。
ところが、地下地上権はちょっと特殊な扱いがされる場合がある。
まず。大都市の地下鉄の路線がどこに走っているのかわかる地図が見れれば見てもらいたいんだけど、ほとんどの地下鉄の路線は道路沿いに路線が敷設されて、住宅やビルなどの下はできる限り避けているよね。これは地上権設定の手間と地上権設定料の支払いのコストをできる限り少なくするためなんだ。道路管理者である国や地方公共団体も公共利用のためなら、わざわざ賃料を取ったりしないし、妨害排除請求権の行使なんてしないだろう。
で、さっきの特殊な扱いなんだけど、首都圏、名古屋市やその周辺の中部圏、近畿圏では大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(大深度法)により、公共利用目的の場合に一定以上の深度の地下ー大深度地下の利用について、国土交通大臣の認可によって無償で使用できるとしているんだよね。
どれくらいの深さが大深度かというと、
・地下40 m以深
・基礎杭の支持地盤上面から10 m以深
いずれか深い方が基準となる。
そのため首都圏や中部圏、近畿圏では土地の所有権が地下に及ぶ範囲は、上記の大深度地下までとなるんだな。
で、この大深度法の適用を受けた事業というのがいくつか進められていて、例えばJR東海のリニア中央新幹線や東京外かく環状道路なんかも、大深度法による国土交通大臣の認可を受けたものなんだな。
他の回答者の回答にあるように、原則、土地の所有権は地上と地下に及びます。
しかし、どこまでが?って話になるのですが、
「例えば大都会に平屋が一軒あったとして、両隣に高層ビルが建ち、平屋の上空20mを通過する形で空中に渡り廊下を建設することは可能なのでしょうか。」
具体的に話をすると、上記のような渡り通路を作ろうとするとき、地上権の設定が必要です。厳密に区分すると、この場合では地上権のうち上空地上権といったりする。
地上権というのは、工作物または竹木を所有するためなどの目的で他人の土地を使用する権利。
民法
第265条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
地上権の取得には、法定地上権によるものと、地上権設定行為によるものがある。で、地上権設定行為は契約、又は遺言によるもの。で、この場合では、一般的には法務局で地上権設定登記をする。(まあ、後々色々と面倒なことになるから)
で、質問のような場合では、地上権設定契約を結び、地上権設定登記をするんだよな。
じゃあ、なんでこのような地上権という考え方や登記がされるのか?というと、そもそも土地の所有権や占有者等には、妨害排除請求権があり、自己の物権の実現が妨げられているとき、その妨害を取り除くよう請求することができるんだな。
質問のケースで考えてみると、例えばその平屋の所有者(ここでは土地と建物の所有者が同じとする)が家を取り壊し、マンションを建てようとしても、渡り廊下を勝手に作られてしまっては、マンションの高さにも制限ができてしまうだろう。そのため、隣り合うビルは勝手に渡り廊下を作ることはできないし、仮に勝手に作ったとしても、平屋の所有者の妨害排除請求により工事を差し止めさせたり、取り壊させることができるんだ。
一方で、隣り合うビルの所有者等は利便性を考えて渡り廊下を作りたいわけであり、平屋の所有者の妨害排除請求権の行使は絶対に避けたいだろう。
そのため隣り合うビルの所有者等は、平家の所有者に対して、地上権設定契約を結ぶしかないんだな。
で、ちょっと考えてもらいたいんだけど、このように地上権が設定されると、その土地の利用について、いろいろと制約が出てきてしまうだろう。当然のことながら、地上権が設定されると資産価値は下がる。
だから、大抵は地上権の設定に伴い、有償つまり地上権設定料を支払うことが一般的なんだ。(定期的な賃料の支払いがされる場合もあれば、一括で補償という形で支払われる場合もある)
ちょっと待て!じゃあ、借地契約やそれに類する契約でもいいんじゃないか?ってなるかもしれないけど、ここからが借地権と大きな違いが出てくるんだ。
借地権は期間の定めをしなかった場合、借地権の残存期間は当初は30年で、更新後第1回目は20年、それ以降は10年となるんだ。そのため、上記のような場合だと、平屋の所有者が30年の更新時に更新をしないと意思表示をされたら、借地権は消滅してしまうんだ。で、ビルを建てて30年で取り壊しではいささか早いだろう。
一方で地上権の場合、残存期間がないとすることができるんだ。
さらにビルのオーナーが他の人にビルを売却したとき、地上権は権利も譲渡されるのに対して、借地権は権利が譲渡されないんだ。
そのため、上記のような場合では地上権の設定が必要になってくるんだな。
「例えば平屋の地下20mに地下鉄の路線が通っていたとして、地下鉄の運営会社は所有者に何らかの利用料を支払う必要があるのでしょうか。」
じゃあ、地下ではどうなのか?というと、地下でも同様なんだ。この場合では地下地上権と呼ぶんだ。
地下の利用の場合でも、地下が勝手に使われると土地の利用に制約がかかるよな。例えば、平屋の所有者が地下部屋を作ろうとするときの障害にもなるし、ビルを建てようにも、基礎杭が打ち込めないから、高さも制約を受けることになるから土地の資産価値が下がってしまう。
ところが、地下地上権はちょっと特殊な扱いがされる場合がある。
まず。大都市の地下鉄の路線がどこに走っているのかわかる地図が見れれば見てもらいたいんだけど、ほとんどの地下鉄の路線は道路沿いに路線が敷設されて、住宅やビルなどの下はできる限り避けているよね。これは地上権設定の手間と地上権設定料の支払いのコストをできる限り少なくするためなんだ。道路管理者である国や地方公共団体も公共利用のためなら、わざわざ賃料を取ったりしないし、妨害排除請求権の行使なんてしないだろう。
で、さっきの特殊な扱いなんだけど、首都圏、名古屋市やその周辺の中部圏、近畿圏では大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(大深度法)により、公共利用目的の場合に一定以上の深度の地下ー大深度地下の利用について、国土交通大臣の認可によって無償で使用できるとしているんだよね。
どれくらいの深さが大深度かというと、
・地下40 m以深
・基礎杭の支持地盤上面から10 m以深
いずれか深い方が基準となる。
そのため首都圏や中部圏、近畿圏では土地の所有権が地下に及ぶ範囲は、上記の大深度地下までとなるんだな。
で、この大深度法の適用を受けた事業というのがいくつか進められていて、例えばJR東海のリニア中央新幹線や東京外かく環状道路なんかも、大深度法による国土交通大臣の認可を受けたものなんだな。
質問した人からのコメント
回答日時: 2022/8/3 13:32:23
ありがとうございます!よく分かりました!
回答
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A
回答日時:
2022/7/30 09:46:31
まず、民法207条で、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と定められています。
つまり、土地の上下に所有権は及びますが、その範囲は他の法令によるということです。
ーーー
次に、上方向の制限ですが、建築基準法や景観法がありますね。
建築基準法では、10mか12m。
景観法では、その場所によるということです。
逆に言えば、20m上の空中回廊については、法的な制限が無いと言う前提であれば、土地所有権が及ぶということですね。
ーーー
また、下方向(地下)については、大深度地下使用法(大深度法)での制限があります。
地表から40m、または建物の支持基盤の最深部から10m以深のうちより深い方ですね。
一般的には地下40mまで所有権が及ぶということになります。
この法律は、東京や大阪などの都心部での話ですから、それ以外の場所では、
100mでも200mでも所有権が及ぶということになります。
(土地所有権の範囲)
第207条
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
つまり、土地の上下に所有権は及びますが、その範囲は他の法令によるということです。
ーーー
次に、上方向の制限ですが、建築基準法や景観法がありますね。
建築基準法では、10mか12m。
景観法では、その場所によるということです。
逆に言えば、20m上の空中回廊については、法的な制限が無いと言う前提であれば、土地所有権が及ぶということですね。
ーーー
また、下方向(地下)については、大深度地下使用法(大深度法)での制限があります。
地表から40m、または建物の支持基盤の最深部から10m以深のうちより深い方ですね。
一般的には地下40mまで所有権が及ぶということになります。
この法律は、東京や大阪などの都心部での話ですから、それ以外の場所では、
100mでも200mでも所有権が及ぶということになります。
(土地所有権の範囲)
第207条
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
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